「楽焼(らくやき)=樂焼」は、「千利休の茶道を表現する」という明確な目的によって考案された焼き物です。
千利休の考える「禅の精神」を具現化したものが「楽茶碗」です。
楽焼を後世に伝えることは単に技術を継承するだけではなく、「わびさびの精神」を伝承することといえます。
長次郎に深い影響をあたえた千利休の「侘茶」の思想・美意識が濃厚に伺えます。
「不足の美」楽焼とは?
「楽焼(らくやき)=樂焼」は、桃山時代に千利休の指導の元で楽家初代長次郎によって始められました。
これまでの焼物とはまったく異なる方法論と技術によって導かれた
「楽焼(らくやき)」
楽焼は、あえて轆轤(ろくろ)を使わず
手とヘラのみを使う手捻り(てびねり)や手捏ね(てづくね)という方法で形成されます。
わずかな歪みや厚みのある形状であることが特徴です。
左右均一ではない
完璧ではない
感情がそのまま表現されたような
造形的なフォルム
そこに「不足の美」を表現しています。
千利休の指導で瓦職人が製作した
「聚楽焼(じゅらくやき)」が始まりとされています。
豊臣秀吉が建てた政庁・邸宅である
「聚楽第(じゅらくだい)」建設時に掘り出された土を使って焼いたことから、「聚楽焼き茶碗」と呼ばれるようになりました。
やがて「楽焼」「楽茶碗」と称されるようになります。
楽焼の釉薬は、加茂川石・貴船石そのものの軟質の施釉陶器です。
石肌と火焼きによって職人独自の肌を表現します。
1200度の高温で表面だけを一気に焼き上げることで、中を半生にし、熱伝導率を下げる作りにします。
その焼き方により、お茶が冷めないような構造の茶碗となります。
まさしく、お茶をいかに楽しむかを追求した技術が詰まっています!
シックでクールな「楽茶碗」
『黒楽茶碗(くろらくちゃわん)』
銘:あやめ 長次郎 桃山時代(16世紀)
長次郎の名作と知られるもので、総体にかけた黒楽の釉薬が黒褐色にかせ、極めて侘びた風情を見せている。口作りは内に抱え込み、胴はわずかにくびれている。天正15年(1587)に利休が茶会で用いたとされる。
この黒楽茶碗は、熱海MOA美術館にてご覧になれます。
機会があるときに、是非みてみてください!
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楽焼をもっと詳しく知りたい方
まとめ
「楽焼(らくやき)=樂焼」を見た時に、何か凄いパワーを感じます!
派手さや繊細さはなく
無骨な荒々しさ
シンプルでシックでクールな佇まいがカッコいい!
『黒楽茶碗』は、ただ黒いだけではない
「茶碗の中の宇宙」と呼ばれるほど
どこか無限の世界観がある!
『赤楽茶碗』は、マグマのように爆発しそうな
人間にはどうしようもできないエネルギーを感じます。
ただ茶人たちが好む茶碗だけではありません…。
これが千利休が抱いた
「侘茶」の思想・美意識
なのでしょうか!?
「わびさびの精神」とは何だろうか?
奥深い日本文化をもう一度学びたくなる焼き物だと思います。
千利休の考える「禅の精神」を具現化したものが「楽茶碗」です。
是非、「不足の美」を楽しんでみてください。
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