箱根寄木細工
HAKONE-YOSEGI-ZAIKU
「箱根寄木細工」の歴史
寄木細工の歴史は古く
江戸時代後期に小田原と箱根の中間に位置する
「箱根町畑宿」
で
「石川仁兵衛」
(寛政2年[1790]~寛永3年[1850] )
によって
現在の寄木細工が確立されました。
日本においては
神奈川県箱根の伝統工芸品として有名。
箱根細工の起源は古く
平安時代初期に創始されたと
云われています。
江戸時代には
カゴかきの副業として盛んになり
温泉場や街道の茶屋で
売られるようになりました。
「箱根寄木細工」は
箱根の大自然から生まれた
日本の伝統工芸です。
明治時代になり
さらに複雑な模様が作られ
種類も増えていきました。
木片を組み合わせて
「市松、麻の葉、亀甲」など
伝統的な模様を作り
薄く削ったものを
小箱などに貼る手法を
「貼りの寄木細工」
といいます。
【箱根寄木細工】
日本の伝統文様を木で寄せた技法。
「箱根寄木細工」の特徴
「箱根寄木細工」の特徴として
鮮やかな木の色が挙げられます。
ミズキ(白)やコクタン(黒)
ウルシ(黄)やハリエンジュ(緑)
ケヤキ(茶色)やウォルナット(褐色)
など
さまざまな色彩の木材が
用いられています。
「箱根寄木細工」は
一般的に天然の木の色を使います。
近年では
顔料とともに木材を煮て
自然にはない
灰色や紫色の木を創りだす手法も
確立されています。
模様の種類
亀甲
文字どおり亀の甲羅をモチーフにした
六角形をつなぎあわせた模様。
六角形の模様は
連続模様でずっと途切れない
亀は縁起のよい生き物という理由から
吉祥模様として愛されています。
市松
色違いの正方形を交互に並べた
「市松模様」
18世紀に活躍した
歌舞伎役者・佐野川市松が
袴にこの模様を施したことから
市松という名が付けられました。
七宝矢羽(しっぽうやばね)
七宝模様と矢羽根模様を
組み合わせた
「七宝矢羽」
同じ大きさの円を4分の1ずつ重ねていく
「七宝模様」は円満、調和などの意味があります。
矢羽は魔除けの破魔矢や的を射る
放った矢は戻ってこないなど
の意味があり
縁起のよい模様とされています。
麻の葉
麻の葉をモチーフにした模様。
麻は成長が早くたくましいことから
子どもの健やかな成長を願う為に
産着にも多く使われていました。
江戸時代に歌舞伎役者の岩井半四郎が
麻の葉模様を施した衣装をつけたことから
人気がでました。
切りちがい升(きりちがいます)
風車をモチーフにした模様。
模様のパターンはいろいろとあります。
中心点がずれないのが特徴です。
シンプルでありながら
日本美を感じさせる模様です。
寄木細工の模様には
他にも様々な種類があります。
一つひとつの模様に
意味や由来があります。
意味を知っておくことで
選ぶときの楽しみの幅が広がります。
模様を描く木工技術
箱根寄木細工は
様々な種類の木材を使います。
それぞれが持つ異なった
材色や木目を生かしながら
寄せ合わせ精緻な
幾何学文様を作り出します。
そして
一定厚みの
「種板(たねいた)」
にします。
これを
特殊な大鉋(おおかんな)で薄く削り
小箱などに貼布
装飾に利用したりします。
「種板(たねいた)」を
そのまま加工し製品にする
手作りの「木工芸品」です。
寄木細工は
様々な種類の木材を組み合わせ
それぞれの色合いの違いを利用して
模様を描く木工技術です。
「縞、市松、紗綾型、麻の葉、マス、矢羽根、青海波」
など
日本の伝統文様を
木で寄せた技法。
様々な種類の木を用いた
幾何学模様
1200年以上続くという
箱根・小田原の木工の歴史のなかで
この技法は比較的新しく
江戸時代末期に箱根で創作された
といわれています。
日本屈指の木材の種類の豊富さを
誇る箱根山系より
多様な木を用いて
独特の幾何学模様が
生み出されてきました。
多様な色彩と
模様のバリエーション
寄木細工では
木材の自然な色合いと木肌が重要です。
このため非常に多くの樹種を用います。
様々な種類の木材を使用して作る寄木細工。
それぞれの木材が
異なる色彩と木目を現していることで
鮮やかなデザインと
目を引く色合いを表現します。
寄木細工で使用する木材
エンジュ
エンジュは
もともと中国原産の樹木です。
現在では国内でも植樹されています。
心材はやや赤みを帯びており
辺材は淡黄白色をしているため
異なる色調を楽しむことができます。
やや硬さがあり加工には
時間はかかるものの
強靭なため割れにくい性質があります。
また腐りにくく
耐久性が高いことから
保存性に優れている木材です。
磨くことで美しい艶が出るため
完成度の高い作品が仕上がります。
神代木
神代木とは数百年
数千年前に
噴火や大きな地崩れにより
地中深くに埋まった木材のことです。
神代木には
「神代カツラ」
「神代タモ」
「神代杉」
「神代ケヤキ」
などがあります。
神代木は
通常の木材とは異なり
落ち着いた深みのある色が特徴的です。
自然災害により生み出されたもので
残存数は少ないのが神代木です。
木材によりヒビが見られることがあり
無傷のものは希少価値が高くなっています。
サクラ
サクラは日本の国花であり
国内には天然記念物に指定されているものもあります。
サクラはやや重みや硬さはあるものの
材質がしなやかな特徴があります。
また粘り気や強さがあるため
細かい加工もしやすくなっています。
磨くことで光沢が出てきれいに仕上がります。
ケヤキ
ケヤキは広葉樹林の中で
最も優れた木材です。
構造材や装飾材など使用用途が
幅広いのが特徴です。
心材は黄色味がかった褐色から
紅褐色をしており
辺材は淡い黄褐色をしています。
やや重くて硬い性質ですが
加工はそれほど難しくはありません。
肌目は荒くはなっていますが
磨くとほど良い艶が出ます。
「強度・耐朽性・美観」の
3拍子が揃っている木材です。
ミズキ
ミズキは寄木細工の他に
こけしの材料として多用される木材でもあります。
心材と辺材の色の差はあまりなく
白色、くすんだ白色、淡黄色をしています。
ミズキは木材の中でも最も白に近い色であり
加工性は良いですが
耐朽性は低くなっています。
箱根寄木細工の製法
寄木細工の製法には
「ズク作り」と「ムク作り」
の2種類があります。
「ズク作り」というのは
まず、色の違う各種の木片を組み合わせて
さまざまな模様を作り貼り合わせます。
そしてその表面を薄く削り
シート状の薄い幾何学模様ができたところで
木箱などの木製品に貼り付けます。
「ムク作り」の方は
木片を貼り合わせた幾何学模様の板を
そのまま製品に加工していきます。
まとめ
「箱根寄木細工」は
自然の樹木の特徴を最大限に生かした
伝統工芸品。
色の変化は
一つひとつ違う色合いをしている。
それは
樹木にはそれぞれ個性があり
育った環境によって
それぞれの特徴が色となり
表現されている。
その色の違いを利用してできる
意味や由来のある文様は
作り手の温かい気持ちを
感じられる。
今では
新しいモダンなデザインの
寄木細工も増えてきている。
伝統とイノベーションにより
これからの寄木細工にも期待したい。